大川小学校「未来をひらくプロジェクト」
― 校歌額復元に込めた想いと歩み ―
1. プロジェクトの背景と始まり
東日本大震災で甚大な被害を受けた大川小学校。 校舎は震災遺構として保存されましたが、校歌額は津波により破壊され、長く手つかずの状態で残されていました。
一般社団法人aichikara代表・石原杏莉氏は、学生支援や被災地スタディーツアーを通じて大川小学校と関わり続ける中で、 「亡くなった子どもたちの想いを未来へつなぐ形を残したい」 という強い願いを抱くようになります。
2020年秋、校歌額の復元を決意した石原氏は、校歌額も手掛けていた弊社へ連絡をくれました。私は以前にも女川中学校の校歌額を手掛けたことを思い出して、ビジネスでの協力ではなく、このプロジェクトに参加したいと申し出ました。
さらに、 「子どもたちが木彫に参加できる形にしたい」 という提案がなされ、プロジェクトは単なる復元ではなく、 “未来をひらくための教育的・象徴的な取り組み” へと発展していきました。
2. 木彫板制作と全国の学校との連携
校歌額は、歌詞部分を構成する「文字板」と、周囲を囲む「無地板」で構成されます。
● 文字板(176枚)
絆でつながった全国の小・中学校の児童が参加しました。
- 制作板を墨汁で黒く塗ってから彫る方法
- 彫刻刀の種類や彫り方のコツ
など、弊社も分かりやすい技術指導を伝えて制作のアドバイスをしました。
プロジェクトの方からの提案で校歌板の裏面には 学校名・学年・名前・将来の夢 が記され、子どもたちの想いが刻まれました。これらは額として完成すると中に貼り付けてしまうため写真に残すこととで開くことのできないタイムカプセルを後々の人たちも目にすることが出来ます。
● 無地板(82枚+予備)
わが社が横浜市にあることから横浜も教育委員会の紹介により、横浜市立篠原中学校が参画しています。 震災後に大川小学校を訪れた経験を持つ生徒や教員が多く、 「未来へつなぐ学び」として積極的に協力していただきました。
無地板は「石垣彫り」という技法で統一され、もちろん裏面には生徒たちのメッセージが添えられました。
3. 木製額の制作と桜の組子
長野県の工芸職人・塩澤正信氏が「さくら組子細工」を無償で提供。 校歌に登場する“さくら”を象徴する美しい装飾が加わり、額全体に温かみと深みが生まれました。
4. 制作の過程と広がる支援の輪
制作期間はわずか数ヶ月。 板の発送・回収、仕上げ作業、額縁制作など、膨大な工程を限られた時間で進める必要がありました。
弊社は特注サイズの木彫板制作、仕上げ道具の提供彫刻の技術指導、協力校との調整 など、プロジェクトの土台を全面的に支援をさせて頂きました。
一方、aichikaraのスタッフや協力者たちは、 夜遅くまで補修作業を続け、時に涙しながら、 「子どもたちの想いを未来へ届ける」 という使命感で走り続けました。
制作の様子は新聞やテレビでも取り上げられ、 多くの人々がこの取り組みに心を寄せました。
5. 完成と寄贈
2021年3月、ついに校歌額が完成。 小さな板が集まり、 “多くの想いが寄り添う大きな一つの作品” となりました。
裏面には、
- 子どもたちの夢
- 参加者の祈り
- 未来へのメッセージ
がびっしりと刻まれています。
震災遺構の工事遅延により寄贈は3月28日に変更されましたが、 石原氏は 「皆さんの想いをご遺族に届けるまでが私の役割」 と語り、最後まで丁寧に準備を進めました。
6. プロジェクトが残したもの
この取り組みは、単なる復元ではありません。
- 震災を知らない世代が「学び」として参加
- 全国の学校・企業・職人が心を寄せ合う
- 子どもたちの夢が未来へ託される
- ご遺族の想いに寄り添う形で進められた
- “命の重さ”と“未来への責任”を考える機会となった
校歌額は、大川小学校の震災遺構に静かに佇みながら、 「二度と同じ悲しみを繰り返さないための記憶」 として後世へ語り継がれていきます。
7. おわりに
私はこの木彫板に使う木を「かつら」以外考えられませんでした。それというのも、かつらの木は中央部と外側の質感が全く違い、芯側は赤く柔らかく、外側は白くてやや硬いのです。一枚の板にしたとき似ていても同じ板はありません。まるで子供たちの個性と同じです。赤い部分だらけで世話がやけない木、赤と白半分ずつ、白くて反ってしまっている木、木目が斜めな木、まっすぐな木、全て個性です。犠牲にならなかったらこの子供たちはどんな成長を続けていただろうか?あの災害の後にも日本各地で災害は起きていますが東日本大震災が被害を最小に抑える教訓を残していることは間違いないでしょう。完成した校歌額は、 震災で失われた命への祈りと、 未来を生きる子どもたちへの願いが込められた、 かけがえのない“記憶の象徴”です。






